風標

かざじるし

母を巡る父子関係

原稿がヤバイときに限って見たかった映画やアニメを見てしまうタイプの人間なんだけど、最近は2001年に放送が開始された「ジャングルはいつもハレのちグゥ」を見ました。懐かしい。

以下はそれを踏まえての気づき。

 

 

まず子供の頃はこのアニメをただのギャグアニメとして深く考えず視聴していたわけだけど、今見るとキャラクターたちの背景がそこそこエグくて重たい設定がゴロゴロと転がっていることに気が付く。

主人公ハレにしても、彼は母ウェダが14歳のときに身ごもった子供であることが名言されるし、そのウェダは裕福な家庭に生まれながらもそれが原因で勘当されたことが明かされる。

けれどもこの作品の面白いところは、そういう重くて暗い設定を底抜けの明るさで笑い飛ばしていく作風にあるとも感じた。

だから私はこうして改めて見るまで数多くのキャラクターたちのシリアスな背景を忘れていたわけなんだけど……

いつの間に、軽い気持ちで見るつもりがすっかりこの魅力に取りつかれてしまったのだった。

 

主人公ハレは前述した通り若くして自分を生み、女手一つで育ててくれた母ウェダに対して、本当に十歳児か?と思うほどの、どこか達観した(ときには一人の女性、或いは自らの娘に向けるような)深く・濃く・複雑で形容しがたい愛情を抱えている。所謂マザコンだ。

そんな彼の前にある日、自分の通う学校の保健医として赴任してきた医者、実父クライヴが現れる。

このクライヴという男、クズを絵に描いたような男で、かなりの女たらし。そのくせ、医者という職業からもわかるとおり頭が良く、さらには顔もいいから手に負えない。正直こういうキャラクターは好きなので腹が立つ。

当然この男がウェダが実家から勘当される原因ともなったわけで、初対面からハレの彼に対する印象は最悪だ。※かつてのウェダは病弱で、その時の担当医が若き日のクライヴであるという設定。患者に手を出す上にロリコンかよという二重苦ぶりである

このウェダを巡るクライヴとハレという父子の関係は、まるで一人の女を争う男と男、恋敵のように描かれる点が個人的には滅茶滅茶アツかった。

どうして昔はこの最高の関係に気が付けなかったんだろう……?とさえ思ったが、こんな頭使って(しかもかなり偏った思考で)ギャグアニメ見ないわな普通はな。

さらに始末の悪いことに、ハレが「母さんはあいつのどこが良かったの?」という問いかけをして、ウェダがあっけらかんと「性格破綻者だったけど顔はよかった」と答えるシーンがあるのだが、後々クライヴ本人には「私が寝ていたら絶対に起こさずにいてくれるところが大好き」と伝えるエピソードがある。

息子には自分の男のどこが好きなのか適当に答えるのに……

父親がどんな人物か尋ねられて息子には「性格破綻者」と答えるくせに、その性格破綻者の無意識の優しさには大好きよと口にするあたり、ア~~女~~!と思わず気が狂いそうになってしまった。そういう「あざとさ」……好きだ。

うまいこと言えないのがもどかしいけど、こういう、子供が母親に対しての独占欲のようなものを抱いても、結局母親は父親の「女」なんだよな……という母子間、父子間の「宿命」みたいなものが好きなんだ。そういうことに気づかされた瞬間でもあった。

 

そんなこんなでクライヴ-ウェダ-ハレの間に横たわるエディプスコンプレックス的関係に趣を見出した2月初旬の出来事でした。オチとかはとくにないのが申し訳ないところ

 

追記:

ハレと彼の運命の女であるところのグゥとの関係もまた言い難い味わい深さがあるなと思った。

落ちモノ系ヒロインよろしくある日主人公と偶然に・しかし運命的に出会う美少女という定番の文脈をなぞりつつ彼らは決して恋愛には発展しない!この距離感がむしろ「男女」たりえる要素を満たしていてインターネット仲人を生業とする人間としては笑顔になれますね。

もちろん純粋にギャグアニメとして楽しめたので細かいこと抜きにして疲れてる人にオススメしたいな。というアニメだった。機会があれば原作も読みたいな!

 

以上です